本紙の健康食品受託製造企業調査では、機能表示の議論に浮かれていない受託製造企業の一面が垣間見えた。機能表示制度については半数が「期待する」と回答したものの、制度が固まっていないことから「どちらともいえない」との回答も4割強で、「期待しない」の声も1 割弱あった。
そもそも、米国型とはいいながら、疾病リスク低減表示なのか、構造機能表示なのか、あるいは限定的機能表示なのか、米国の制度との大きな違いは、我が国には、トクホ制度があり、疾病リスク低減表示を規定するトクホと構造機能表示に近い栄養機能食品が先行している状況があり、さらに、我が国の機能表示構想にはサプリメントだけでなく、一般加工食品や農産物なども視野に入れている。このため、どのような機能表示が実行可能なのか、それに連関するエビデンスベースの水準など、たたき台となる具体策の提示が必要だ。
そうした中で、機能表示への期待がくすぶっているのは、機能表示の経済効果が数字として捉えられておらず、その結果、将来展望が開けないことがある。プラスに働くのかマイナスに働くのか?むしろこれと並行しイメージ広告の規制強化の方針が伝わっていることも影響している。また機能表示が具体化しても、厳しいエビデンス条件がつけば、コスト拡大につながりマイナスも大きいのではという懸念もある。
売上高が10億円未満の企業が調査の半数で、100億円企業の戦略とは自ずと異なることもある。政府は中小企業にも目配りをしているというが、必ずしもそのような期待はできない、大手でないと機能研究などもおぼつかない、という懸念もある。
実際、安全性試験など研究機関は、半年先まで仕事が埋まっているといった状況が広がっており、一部で経済効果は生まれつつあるが、中小企業が委託するには、費用の高騰も始まっているという懸念もある。
加えて、消費者庁サイドの状況も、阿南長官や課長講演の機能表示制度への否定的な発言を受け、「本当にやるのか」といった問い合わせも相次いでいる。調査内容は、期待はあるものの、厚労省時代から、サプリメント業界は何度も裏切られてきたという体験があり、そう簡単にお祭りの神輿は担げないというのかもしれない。機能表示の評価は現時点では、意外に冷めているのが現実のようだ。