高齢者や疾患患者を対象にした食品(米国ではメディカルフーズと呼ぶ)は、高齢化の進展、慢性疾患の増加によって欧米をはじめとする各国で市場が拡大しており、推定で90億ドル規模に達したという(米Drugs Aging調べ)。
世界市場は今後毎年6.7%の成長を遂げるとの報告も(Reportlinker)。革新的な製品開発で市場をけん引する米国、英国、ドイツでの市場拡大に加えに、中国・インドでの需要も増えてきた。
米国では、15年ほど前からメディカルフードが市場を形成するようになり、近年は年10%のペースで拡大、2011年時点で20億ドルを突破しており、なお成長を続けている(2011年:bio Strategies Group)。
メディカルフードは、治療過程や障害状態に応じた配慮がなされた食事・食品として位置付けられており、ラベルは一般食品と同じ「Nutrition Facts」の表示が必須。さらに、医師の指導のもとでなければ利用できないという限定がある。高齢者向けには、口腔・嚥下機能、消化器症状の特性に合った設計がなされており、ビタミンミネラル欠乏症から筋力低下やサルコペニア、骨粗鬆症、アルツハイマーまで疾病特性を考慮した商材が揃っている。機能性素材を配合したものとしては、プロテインを中心に、オメガ3系脂肪酸、イソフラボン、ビタミンD、亜鉛、カテキン、葉酸などが用いられている。
現在米国FDAではメディカルフードの業界向けガイドラインの整備を進めており、Q&A作成に取りかかっている。定義や表示、利用範囲、製造過程や管理過程の品質保証などについても言及する。
米国サプリメントメーカーは、メディカルフード市場への参入に積極的な姿勢をみせており、メディカルフードのガイダンスが整備されることで今後の参入も加速しそうだ。
現在、時同じくしてわが国でも農水省が中心となって介護食品の定義についての議論を進めており、健康食品メーカーの参入についても活発化していくと推測される。