消費税増税の産業界への影響を調査したわけではないが、取材の過程で出てくる声は、サプリメントでは増税前の特需が一応あったようだ。
他方、一般食品形態のものや、自然食品などでは、変わらなかったという声が多かった。一応というのは、爆発的ではないということで、当然相応の買い控えの反動もあるのだろうが、むしろ、引き続く需要増を期待する声もある。雰囲気はそれほど悪くない。前回の増税後の経済状況をなぞる主張もあったが、逆に「欧州では20%や25%の付加価値税が一般的で、8 %程度でなんで騒ぐのか」と言った声も紹介され、それはそれでなるほどということか。むしろ、法人税減税に期待する声や、所得税増税、相続税増税などの一連の動きは、国が抱える借金や高齢化問題に取り組む姿勢としては評価できると覚悟の声もある。
懸案は消費動向だ。4 月1 日の消費税増税後の量販店などの表示は、流石に外税表示が多く、本体価格の安さや不変であることをアピールするケースが目立つ。一方で増税前に、給与の改善が大手を中心に喧伝され、大手C V Sやスターバックス、ユニクロなどでアルバイトの社員化などが明るいニュースのように伝えられたが、一方で、人手不足で大量の店舗閉店のニュースも飛び出し、雇用側の事情だったとの実態も露見している。
そうした中で、食品業界に影響のある経済対策などはほとんど見当たらないが、増税後の談義をする余力もない。むしろ、前向きの取り組みとして、機能性表示は、購買力の向上が見込めなくても期待できそうな政策だと、メーカーの関心が高まっている。サプリメントの消費は高齢者ほど高く、予防分野への出費余力も大きいが、最大の難点は「何にいいのか、表示ではわからず、推測でするような商品情報は困る」という消費者サイドの声だ。
メーカー側の「研究成果に見合う表示ができず、根拠のないイメージ戦略に巻き込まれている」という企業側の声とも一致する。租税の基本が変わるように、機能性表示問題は、イメージからエビデンスへという流れを作ろうとしている。この切り替えは、企業間に様々な影響を及ぼすことは避けられないが、長期的には、サプリメントの地位向上と市場拡大を促す起爆剤となる。機能性表示制度の合理的な整備が進むことに期待したい。