統合医療

生活習慣病、境界領域での臨床栄養学的対策が必要 介護リスク低減も(日本臨床栄養学会総会)

 疾病発症前の“境界領域”において、食事療法や臨床栄養学的アプローチの推進の必要性が指摘されている。先日開催された日本臨床栄養学会総会の特別講演では、同学会前理事長の板倉弘重氏(茨城キリスト教大学名誉教授)が「境界域医療における臨床栄養学のすすめ」と題し特別講演を行い、潜在的に進行する生活習慣病や、介護リスクを低減するために病気と診断される前段階からの対策が肝要と説明した。
 来年から運用が開始される食品の機能性表示制度についても、「境界領域における疾病対策という観点からも喜ばしいこと」とし、「保健と医療のはざまにある境界域患者において、機能性食品が果たす役割は大きい」と評価した。


発病前の境界域こそ 臨床栄養学的アプローチを
 今月4~5日に都内で開催された第36回日本臨床栄養学会総会特別講演で、同学会前理事長の板倉弘重氏(茨城キリスト教大学名誉教授)は「境界域医療における臨床栄養学のすすめ」と題し、境界領域における食事療法の推進について講演した。
 同氏は、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病などの疾患を例に、「発病する前の境界領域における臨床栄養学の推進が重要」と説明。現在、境界領域は保健と医療のはざまにある病態であることから、医療機関での保険診療の対象外となるケースが多く、対策や管理が不十分と指摘されている。疾病発病前の境界域対象数は多く存在しており、糖尿病発症前の境界領域にいる前糖尿病患者は、かなりの高い確率で糖尿病を発症するということもわかっている。同氏は、「糖尿病の重症化は、心筋梗塞や脳梗塞、悪性腫瘍、認知症など健康寿命の短縮化のほか、医療費の高騰につながる」とし、「糖尿病患者を減らすには境界域段階での適切な対策が必要」と説明した。
 実際、米国では前糖尿病患者は年々増加傾向にあり、米国糖尿病学会では、糖尿病と診断されるほどではない状態をPrediabetes(糖尿病前状態、糖尿病前症)と定義し、ガイドラインも設定している。
 現在、前糖尿病に認可された薬剤も開発され、治療薬を用いた臨床試験もおこなわれてはいるが、その管理には食事療法と運動療法の比重が高いのが現状だ。同氏は講演で、糖尿病境界域における臨床栄養学によるアプローチとして、「膵β細胞量低下予防、肝細胞機能の維持などをターゲットにした研究やエビデンスづくりが重要」とし、食事療法をもとにした臨床栄養学が担う役割が大きいと話した。
 また、来年から運用が開始される食品の機能性表示制度の導入についても「境界領域での疾病対策という観点からも喜ばしいこと」とし、機能性食品の利用拡大が生活習慣病予防、介護リスクを低減する上でも有効であると評価した。一方で、「制度に対応できる専門家の育成と活動の場が必要」と提唱し、エビデンスに基づいた正しい情報を伝えることの重要性についても触れた。

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