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【特集】 健康住宅・施設

日本の住宅は世界的に「時代遅れ」
急ピッチで進む「健康住宅化」
「安全・安心・健康」の尊さが胸に強く刻まれた東日本大震災から丸4年。住宅や高齢者施設、病院などに「健康」を求める動きが広がっている。断熱化や自然素材の活用、心安らぐデザインで「健康住宅・施設化」を進めた結果、住人や労働者の体調が改善したり、施設利用者数が倍増したりといった事例が多数報告されている。


 日本人がいま住んでいる家の大半が間もなく「時代遅れの家」になる。一昨年に改正省エネ基準が施行されより厳しくなった基準が20年から義務化される。今年度中は経過措置として現行の1999年省エネ基準(次世代省エネ基準)でもいいが、実はこの一昔前の基準ですら、全国約5,500万戸中たった5 %しか満たしていない(2012年国土交通省住宅局調査)。
 日本の住宅屋内温度が欧米などに比べて低いのはそのためで、寒暖差が原因とみられる循環器疾患などの健康障害が社会問題化してきた。
 国は「スマートウェルネス住宅等推進事業」や「住宅エコポイント制度」で断熱化を促しており、改正省エネ基準をクリアしたい住宅メーカーの「健康住宅化」が進む。LIXIL住宅研究所のように実験施設を建ててデータを積み上げながら、個人や事業者向けに「健康住宅・施設」の新築や建て替え、リフォームの提案を進
め、受注を伸ばしている。
 断熱化では外界と接する窓の高性能化が進む。YKK APや三協立山、LIXILなどの建材大手が断熱性の高い樹脂サッシの生産を増やし、専門メーカーのエクセルシャノンに対抗している。室内の空気浄化もポイントだ。セキスイハイムや三井ホームなどがPM2.5対応の全館空調システムを採用し、湿度を人体によくダニ・カビが発生しづらいとされる40~60%に保つ。パナホームは0.3μmの微粒子を99.97%カットするHEPAフィルター搭載の換気システムを開発した。大建は調温壁材を充実させている。
 震災を契機に地盤も重視されるようになった。わずか0.6度傾いただけでめまいなどが生じるというデータもあり、地盤ネットやジャパンホームシールドなどの地盤解析会社が受注を増やしている。
 ストレスチェック義務化も追い風シックハウス対策から、構造材や建具に接着剤で張り合わせた集成材ではなく無垢材を使用するメーカーが注目を集めており、大手では無垢フローリングのスウェーデンハウスやウッドワンなどが存在感を見せる。0 宣言の家や天然住宅、ソーラーサーキットの家、無添加住宅などは人体に有害な恐れのある素材を排除した独自の建築基準を定め、契約工務店を広げている。
 デザインも無視できない。病院などの設計を多く手掛けてきたドムスデザインは、色彩やデザイン、間取りを工夫して利用者や労働者の心身の負担を軽減させ、「行列のできる病院」や「激務の環境でも退職率が少ない職場」を実現している。
 今年12月にストレスチェックが義務化されるなど、労働者のメンタルヘルス対
策が重みを増している。ドムスデザインの戸倉蓉子社長は「社員満足度の向上が顧客満足度の向上につながる」。労働者の心身に配慮した「健康的な職場」への転換を、真剣に考える時が来ている。

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