「明日への統計」(総務省)から見えてきた真実
消費増税の影響で不振が続いた健康産業も、団塊世代の高齢者の旺盛な消費に牽引され、着実な回復を続けている。先ごろ発表された総務省の「明日への統計2015」でも、スポーツやサプリメントにとどまらず、パック旅行やガーデニングなどでの支出も60代、70代で飛び抜けて(上グラフ)おり、健康ビジネスなどの消費を牽引していることが明らかになった。化粧品やエステなどの健康美容分野でも、高齢者の消費拡大が進んでおり、かつての高度成長期の人口ボーナス*ではないが、60歳以上の人口の増加が消費を牽引する新しい潮流が生まれている。これまで、少子高齢化は、生産年齢人口の減少と消費の縮小、医療費や介護などの社会保障の拡大につながるとする見方が大半であったが、増加する元気な高齢者は、実は健康ビジネスの消費の担い手だったということが判明した。
ちなみに、高齢者人口の増加は総人口が減少するなかでも増加を続け、2035年には65歳以上の高齢者人口は33.4%で3人に1人となる。一方、老年学会は先頃「高齢者は昔に比べ5~10歳ほど若返っている」とする研究を発表するなど、高齢者の一層の消費パワーの増幅が期待されている。健康寿命延伸に向けた行動変容などもあり、少なくとも2040年の高齢者人口のピークまで健康産業には追い風が吹き続けると期待される。
調査のベースとなる一般世帯数は2010年に初めて5,000万世帯を突破、最も多い世帯累計は「単身世帯(一人暮らし世帯)」で32.4%となった。2014年9 月15日現在の65歳以上の高齢者人口は3,296万人で、4 人に一人が高齢者になっている。冊子では消費税増税による影響や消費スタイルの変化を分析、消費動向の特徴を紹介している。また、高齢者の暮らしについて、特徴的な支出4 項目を取り出し、世帯主の年代別の傾向を紹介した。
取り上げられたのは「スポーツクラブ使用料」「健康保持用摂取品」「パック旅行費」「園芸品・同用品」の4項目で、結論として「パック旅行費」では60代がトップ、「園芸品・同用品」では60代、70代が断トツに、また「スポーツクラブ使用料」でも、60代がトップに。そして「健康保持用摂取品」では50代、60代、70代と年代が上がるごとに消費は増加傾向にあることが明らかになった。これらは、2 人以上の世帯で世帯主の年齢階級別の支出状況を、40代未満、40代、50代、60代、70代以上の5 分類で比較したもので、これらの4 分野で、いずれも60代の健闘ぶりが目立った。
小冊子では「運動やサプリメントにより健康管理に気を配りながら、旅行やガーデニングなどの趣味を楽しむ高齢者の姿が見てとれる」とし、また「60歳以上の就業率で、60代の女性の上昇傾向」にも触れている。これまで旅行は、女性や若者が対象で、スポーツクラブも若者から中年までが主流であったのに対し、
様々な分野で高齢者の台頭が目立つ。詳細に見ると、スポーツクラブへの支出額では、トップの60代は50代の1.5倍になる。サプリメントでは、40代未満の世帯の使用額を1 とすると、40代で2 倍、50代で3 倍、60代で4 倍、70代以上では6 倍という割合で驚異的な伸びが続く。サプリメントに関しては、「70代の消費は40代の消費の6 倍」になっており、市場動向を左右するのは、60代、70代の消費者だったということも判明した。