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【厚労科学研究】「腰も膝も痛い」・・・推計680万人

 膝痛・腰痛の両方に悩む人は全国で680万人と推定されることが、厚生労働科学研究「膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための研究:大規模住民コホート(LOCOMOスタディ)の追跡」(主任研究者・東京大学大学院医学系研究科特任准教授、吉村典子氏)2014年度総括研究報告書でわかった。分担研究では、介護予防のための多くのエビデンスを得ることができたといい、ロコモとメタボの構成要素と軽度認知障害には因果関係があることなどを示唆。膝関節の痛みや機能低下は「抑うつ」に関連していることも報告された。


 
 研究班では、超高齢社会となった日本で、膝痛・腰痛・骨折などによる要介護高齢者の低減には、運動器障害とその主要原因疾患に関する日本人の疫学エビデンスを構築し、「危険因子を解明することが必須」と指摘。しかし、「それらは皆無に近かった」。こうした状況を受けて、日本において運動器障害予防目的で実施されてきた代表的な9地域コホート研究のうち、8 地域の情報を統合、1万2,019人(男性3,959人、女性8,060人)の大規模統合コホートを構築した。運動器疾患予防を目的としたコホートとしては「世界的にみても類を見ない規模」という。
 膝痛と腰痛について情報が得られた9,046人を分析。その結果、膝痛・腰痛を合併している割合は12.2%で、男性が10.9%、女性が12.8%。この有病率をもとに計算すると、膝痛・腰痛の合併者は680万人(男性280万人、女性400万人)と推定されるとしている。男性は年齢とともに高くなるが、女性は60~79歳で最高値になり、80代で低下傾向にあったという。
 分担研究者が担当する各地域コホートでは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)などに関する研究を実施。後期高齢女性997人を対象とした調査では、腰痛と膝痛はロコモの促進因子であることが示唆された。65歳以上の913人を平均7.9年観察した研究では、膝痛・腰痛の有無は生命予後への直接の影響は少ないが、膝痛があると要介護となる危険性が高いことが分かった。「高齢者の多くの膝痛は変形性膝関節症と関連しているものと考えられた」としている。
 一方で、腰痛の骨粗鬆症や椎体骨折との関連性は膝痛に比べて低く、様々な他の要因が腰痛に影響を与えていることが示唆されたとしている。平均年齢75.7歳の1,000人を対象とした解析では、サルコペニア(筋肉減弱症)の有病率は男性13.8%、女性12.4%で、「男女差はなかった」とした。また中年期の運動経験がサルコペニアのリスクを約半分にすることがわかったという。「今後のサルコペニアの予防に有益な情報となると考えられる」としている。
 1,384人対象の3 年間の追跡調査では、ロコモとメタボの構成要素と軽度認知障害はお互いに因果関係があることを確認。「メタボの予防がロコモの予防に、ロコモの予防がメタボの予防に、さらに軽度認知障害の予防がロコモやメタボの予防につながる可能性があることが分かった」としている。
 今後のエビデンス蓄積により、要介護の効率的な予測、予防の可能性が示唆されたとしている。地域高齢者を対象とした573人対象の解析では、膝関節の痛み、機能低下ともに、将来の抑うつと関連していることを確認。「とくに痛みでは、夜間床に入っても痛いようだと、将来の抑うつの危険性が高まっていた」という。機能に関しては、「靴下の着脱」などの日常動作や、「車や浴室への移動」に支障があると、抑うつの危険が高まることが示された。これらの情報は外来等で聴取可能なことから、「抑うつのハイリスクを示す項目として役立てることが可能と考えた」としている。
 報告書では、分担研究者らの独自の観点により、「高齢者要介護予防のための多くの有益なエビデンス
を得ることができた」としている。

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