特定商取引法(特商法)見直しに向け消費者委員会に設けられた「特定商取引法専門調査会」は、訪販業や通販業といった事業者側と消費者団体側の議論がおおむね平行線に終わる形で折り返しを迎えた。先月25日に開かれた11回目の会合では“中間取りまとめ”(案)に関する最終的な意見を集約するはずだったが、「取りまとめと呼ぶには、議論が熟していない」といった声があがり、座長と事務局一任で“中間整理”や“中間報告”と名称をあらためることになった。事業者と消費者団体による議論は対立の構図をみせたが、特商法改正に向け双方にとって着地点は見いだせるのだろうか。
「対立が続いた格好になったが、(後半の審議となる)9 月以降はこうした図式でなく真摯に謙虚に考えていく必要がある」(野坂雅一委員)。事業者と消費者団体側との議論は、協調とは程遠い“対立”と表現してもおかしくない形で進んだ。その構図を生んだ理由の1 つが、「立法事実としての根拠と、その分析の妥当性について」だ。議論を進める上での重要な資料となった消費者庁の意識調査では、「勧誘をまったく受けたくない」と回答した消費者が訪問勧誘、電話勧誘ともに96%と結論づけた。
この結果について、訪販協会長の鈴木弘樹委員や通販協会長の佐々木迅委員をはじめとした事業者側は「特商法の適用除外の項目を含んでいる。消費者にとって訪販や電話勧誘販売イコール悪徳というイメージがついていることは、調査結果が消費者の意思を反映しているとは言い難い」と結果の妥当性について反論。さらに「一部の問題行動をする者のせいで多くの健全な事業者にまで法の網をかけるのには違和感がある。問題行動をする多くが犯罪行為者や適用除外者であることから仮に規制が導入されても順守を期待できない」と再考を求めた。しかしながら、中間整理では調査結果には「特商法適用除外も含まれる」という旨の注釈が入るにとどまり、PIO-NETの統計情報とともに重要な審議材料となった。
議論の中核となる販売の行為規制についても、行為規制の文言は改正しない対応策として「自主規制の強化・拡充」や「執行強化」「再勧誘禁止違反行為に対する効果の加重」や、再勧誘禁止以外の行為規制拡充として「勧誘を受ける意思確認の法的義務化」「不招請勧誘の制限」「不招請勧誘の禁止」さらには事前参入規制の導入などが議論の対象として示された。勧誘拒否の意思表示法についても「お断りステッカー」や事前に意思を行政機関などに登録する「レジストリ制」などがあがったが、それぞれ賛否が分かれた。
中間整理は、あくまでも調査会における議論をまとめた内容。しかしながら、減少しない被害に効果的な対策を構じることは避けられない。一方、「まずは規制ありきの議論」(栃原克彦委員)と、バランスを欠く審議の進展に不快感をあらわにする委員も少なくない。9 月以降も関係団体などからのヒアリングを実施し、具体策を審議する見通しだが、事業者側にとって厳しい内容になることが見込まれる。現状のままでは、双方の立場からの合意が得られるような公正で柔軟な検討がなされるとは考えにくい。