日々の健康管理にかかせない機能性素材として、そのポジションを確実のものにした乳酸菌やビフィズス菌。ヨーグルトや乳酸菌飲料はもちろん、サプリメントや青汁などの健康食品、パンや麺類、おやつに至るまでその応用範囲は広く、乳酸菌に関する消費者調査では、9割以上が摂取の経験があり、さらに6割を越える人数が継続的に摂取しているとのデータも。まさに“国民食”ともいえる勢いになっており、一億総乳酸菌摂取時代に突入している。
なかでも、乳酸菌が持つ機能性や有効性を打ち出したプロモーションや商品設計が活発化しており、拍車をかけるように機能性表示食品も登場。メディアでの露出も多く、NHKが放映した腸内フローラの番組は特に反響が大きく、腸内環境改善素材としてさらなる注目が集まっている。乳酸菌が待つ免疫賦活作用や抗肥満作用、抗アレルギー作用など個々の多様な機能性への着目がはじまっており、「乳酸菌を摂取する」というスタンスから「どの乳酸菌を摂取するか」というステージに移りつつある。原料サプライヤーも自社菌のオリジナリティや優位性、他社との差別化を図るための取り組みを積極的に実施しており、乳酸菌市場が過去にない活況をみせている。
『明治ヨーグルトR-1』の登場で“機能性ヨーグルト”の名称が定着し盛り上がりをみせるヨーグルト市場。各社、機能性に特化したプロモーションを強化し、整腸や便通改善のみならず、インフルエンザ予防、花粉症改善、骨密度強化、尿酸値の低下、内臓脂肪蓄積抑制など、多岐にわたるテーマの有用性を打ち出す
ことでオンリーワンの乳酸菌をアピールしている。一方消費者の乳酸菌に関する関心も高まっている。
昨年放映されたテレビ番組“NHKスペシャル”腸内フローラが取り上げられると、話題のキーワードに。また、新たにスタートした機能性表示食品制度で複数社のメーカーがビフィズス菌や乳酸菌を配合した商品を届け出たことで、市場はさらなる追い風に。関連商品の売上は増加傾向にあり、国内主要乳業メーカーの売上から推定したヨーグルト市場はいまや4,000億円規模に膨れ上がるなど、その勢いは加速している。
機能性ヨーグルトが売れている背景には、消費者の健康志向の高まりが挙げられる。自分の健康は自分で守るという“セルフディフェンス”という観点から、体に良い働きをする食品や機能性素材を摂取する機運が高まっており、なかでもヨーグルトは古くから身近な食品として馴染みが深く、日々摂取できる食品として健康管理に利用されている。
現在では、腸内フローラの改善をキーワードに、ヨーグルトのみならず発酵食品や飲料、サプリメントやその他加工食品に至るまで幅広い形態で利用が進んでいる。腸内フローラへの関心の高さは前述のテレビ番組の影響が大きい。番組では腸内フローラの状態が悪化すると、肥満や肌のシワ、糖尿病などの生活習慣病や脳機能低下、うつを引き起こす要因となると紹介された。腸内細菌の全貌を解明すれば、今後の医療分野にも大きな変革をもたらすとして、欧米では国家的な研究プロジェクトがスタートしたことも紹介された。
腸内細菌研究の第一人者でバイオジェニックス提唱者、東大名誉教授の光岡知足氏は、本紙2011年のインタビューで「近年、腸内フローラと生活習慣病との関連性に関する研究は進んでおり、腸内フローラがこれらの疾患の予防・治療の標的となりうることが示唆されてきた」と腸内フローラの重要性を指摘しており、プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックスなどの機能性食品は免疫強化物質として生活習慣病予防をはじめ、脂質代謝改善、血管系への作用、がん細胞などへの作用としても有用と説明し
ている。また同氏は、「発酵乳や乳酸菌飲料、殺菌乳酸菌、乳酸菌生産物質の効果は、乳酸菌の菌体成分による免疫刺激が主体となっている」と提唱しており、まさに乳酸菌、ビフィズス菌、乳酸菌生産物質は、腸内フローラ改善の根幹を成す三種の神器ともいえそうだ。
昨年スタートした機能性表示食品制度。1 月25日時点で202品の機能性表示食品が受理されており、そのなかで乳酸菌やビフィズス菌を関与成分とした商品は23品、全体の約10%の割合を占めている。各社
の表示テーマをみると、森下仁丹の『ビフィーナ』シリーズでは「腸内フローラを良好にし、便通を改善する機能がある(抜粋)」とし、江崎グリコの『ビフィックス』シリーズでは「生きて腸まで届き、腸内で増殖することで、腸内環境を改善する(抜粋)」、ファンケルの『快腸サポート』、森永乳業の『ビヒダスBB536』でも「腸内環境を整える」、「腸内環境を良くする」など、いずれも腸内フローラ(腸内環境)を表示に盛り込んでいる。
一方、乳酸菌では現時点唯一の受理となる雪印メグミルクは機能性関与成分をガセリ菌SP株とし、表示内容は「内臓脂肪の低減」を盛り込んだ。乳酸菌による内臓脂肪への作用としては従来のトクホでも例はなく、抗メタボカテゴリーとして新たな顧客開拓を進め、好調な出足となっている。同社担当者によると「昨年9月の段階で表示前と比べ、カップタイプで6 倍、ドリンクタイプで3 倍以上の売上。消費者への認知度も向上し、店頭では回転率も上がったほか、配荷数も増えた」という。
特にスーパーマーケットでは、「ポップや店頭告知など、販促ツールが充実しているため売りやすい」として機能性表示制度利用の戦略がはまった格好となっている。このような状況下のなか、期待されるのが免疫領域の機能性表示食品の登場だ。すでに消費者庁は「限定的な指標を基にした免疫に関する記述は不可」とガイドラインで示しており、表示内容に免疫という単語を盛り込むのは難しいとみられている。
しかし、明治R-1のように免疫向上を想起させるプロモーションは盛んに行われており、消費者のニーズも高い。一部の企業では免疫領域の表示を想定したシステマティックレビューを検討しており、新たな訴求商品の登場に期待が高まっている。