ビタミンは足りており、サプリメントは不要 ―― とする驚くべき趣旨の消費者説明会が先月、食安委の姫田尚事務局長などの主導で行われた。年末の報告書に基づくもので、新しいデータはなく、米国での事件や中国の輸入品の有害データの報告を多く引用、国内のデータと折り混ぜ、殊更リスクを印象付ける(悪徳商法のような)手法で構成され、内容も過去のデータばかりの乏しいものだ。
報告書の脆弱性の裏返しか、説明会の質疑応答も終始高圧的で、科学的視点の欠如も目立った。会場からは機能性表示に取り組む自治体関係者の質問もあったが、取るに足らぬものと切り捨てた。
ちなみに、食安委の姫田尚なる人物についてwebの講師紹介文には、農水省を経て現職に。「EUや米国に後れを取らないように科学的な食品安全施策について話す」とし「フードファディズムや怪しげな健康食品と戦う力を」と欧米追随の挑戦的な文章が綴られている。食安委とはこうした人物の集まりなのか?
一部の学識者からは、壊血病や脚気とビタミンの関係性を知らない人が増えていると、ビタミンの知識の風化を懸念する声が出たり、ビタミンD不足で子供のくる病が増えているという指摘もある。先頃公表された国民健康・栄養調査も、所得格差が健康格差につながっている実態を取り上げ、若年層の深刻な朝食抜きの状況が示された。また 1 日 1 食の学校給食の食事に頼るような「子どもの貧困」が社会問題となる中で、ビタミンやミネラルの欠乏のリスクは高まっているとみるのが一般的だ。調査もせず「欠乏症が問題になることは稀」(池田三恵分析官)と言い切るとは、あまりに不用意、無知蒙昧な発言だ。著名な元外科医が、二分脊椎症の手術のリスクとサプリメントのメリットを勘案し、妊娠前の女性の葉酸摂取を呼びかけ活動している現実もある。
ニュース性もない説明会に、参加者からは「意味がよくわからない」「退職間際のメンバーのパフォーマンスでは」との皮肉な指摘も飛び出している。身の安全だけを考えていると揶揄されてきた食安委だが、先の報告書の質の低さ、調査もなく欠乏症はないと断じる無責任さ、など政府機関としては常軌を逸しているとしか言いようがない。かくの如き非科学的な見解が、なんの脈絡もなく内閣府から垂れ流されている現実を、機能性表示を推進する政権はどう考えるのか。
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食安委、「現代の日本に健食は必要なし」 機能性表示にも疑問