昨年4月から認められた食品用途特許。「業界を二分する」という警戒の声が挙がる一方、早くも40件近くの食品用途特許が権利化されるなど知財戦略に長けた企業は対応を進める。特許庁は来年3月まで中小企業への「減免制度」を実施。現在出願中の特許が一斉に公開時期を迎える今秋を前に、機能性表示と表裏一体になった知財戦略を早急に進める必要がありそうだ。
「全ての健食会社が知財戦略を考える余裕があるわけではない。業界を(ついていける企業といけない企業に)二分する問題だ」-健食業界から悲鳴が上がる一方、医薬品や化粧品など他の業界からは、「食品も(我々の業界と)同じ土俵にあがる」という冷静な声が聞かれる。
用途特許は、すでに知られている成分(公知の成分)に新たな用途(機能性)を発見した場合などが対象。医薬品の例で言えば、従来爆薬であったニトログリセリンに狭心症治療薬としての新しい用途を発見したような場合だ。その際、企業は研究に多大な投資を行っている。その投資回収を容易にするため、新たな用途を特許で保護し、市場での排他的独占権(最大20年)を認めることで、企業の研究インセンティブを保持する仕組み。
機能性表示食品制度は、機能性を表示し売上増が見込めるプラスの面がある一方、SRでの届出も可能なため、先行企業の研究成果が後発企業に利用されるマイナス面もある。関与成分が新規物質であれば物質特許が認められるが、公知の物質に新たな機能性を発見した場合には、先行企業を法的に保護できなかった。そのため昨年4 月から特許庁は食品についても用途特許を認める方向に舵を切った。
すでに昨年末の時点で36件の食品用途特許が権利化されており、知財戦略を進める企業は着々と対応している。「健食でもこうなると予想はしていた。(すでに認められた36件の)他社特許をみると、自社でも対策を進める必要がある内容だ」(中堅企業幹部)と現実的な声もある。
先月はさらに5 件以上が権利化された。
ユニアス国際特許事務所の春名真徳弁理士は、「今年秋には多くの出願が公開時期を迎える。今のうちの対応が急務」と指摘。特許は出願から1 年半が経過すれば公開され、権利化されなくても一定の
牽制力を持ち始めるからだ。「最終商品に表示しなくても、商談などで機能性をアピールすることも表示行為にあたる可能性がある」(春名氏)ため、思わぬところで権利侵害の地雷を踏む恐れもある。特許にはコスト面の不安もあるが、特許庁は研究開発に注力する中小零細企業を支援するため、来年3 月まで特許にかかる費用を最大……
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