近年、わが国のスポーツ愛好家の中心は中高年になりつつある。このほど発表された笹川スポーツ財団の調査によると、60~70歳代のジョギング・ランニング実施率は過去最大を記録した。さらには65歳以上ではフィットネスクラブの会員数も伸びる傾向にある。これまで一部のアスリートとヘビーユーザーに限られていた市場はすそ野を拡大し、さらには女性がダイエットの際にタンパク補給する利用法も浸透するなど、用途は多様化し新たな局面に突入している。参入メーカー各社は2020年の東京五輪を好機ととらえ、販促強化や商品ラインアップの拡充に注力しはじめた。スポーツニュートリション分野の動向を追った。
バータイプの品ぞろえ拡充、
クラッシュゼリーも伸び
スポーツニュートリション市場は世界的に拡大している。直近で全世界のスポーツニュートリション市場は 1 兆1,000億円を超えている。6 割が米国で欧州、豪州が続くが、いずれも年率 2 ケタ成長する実態が報告されている。日本も伸びてこそいるが、これまでスポーツフードの明確なジャンル区分が未確立だったこともあり諸外国と比べると比較的低い成長率にとどまっていた。しかしながら、日本のスポーツニュートリション市場は商品形態と用途の多様化という新たな局面を迎えている。昨年から今年にかけてもバータイプの栄養調整食品やクラッシュゼリー飲料などで新製品投入が進み、従来の主流であった粉タイプの製品をしのぐ勢いで急成長している。傾向としてはスポーツ愛好家だけでなく、ダイエット時の栄養補給を目的とした利用法も目立ち始めた。プロテインなど粉タイプの飲料もアスリート向けよりもライト層向けの伸び率が高い。メーカー各社ともすそ野に向けたアプローチを進めた方が潜在的な需要の大きさからライトユーザーや女性をターゲットとし販売促進に力を入れている。ライトユーザー向けの商品開発で重要視されるのは風味や舌ざわり、口当たりのよさだ。特に素材特有のくさみ・・・
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販売チャネルは多様化し、
ネット通販が台頭
スポーツニュートリションの代表的な素材として、疲労回復や即効性が売りのアミノ酸、体力や筋肉づくりを目的としたプロテインやクレアチン、持久力を維持するL-カルニチンや鉄、コンディション維持のためのビタミン・ミネラル類などがあげられる。ここにきて大きく市場で目立っている素材がHMBだ。“プロテインを超える”というキャッチコピーがネット通販などでも話題にな・・・
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新制度の活用に期待感高まる
素材によっては機能性表示食品制度の利用も進んでいる。疲労感の軽減などではCoQ 10 やイミダゾールジペプチドなどを関与成分とした商品が受理されている。順天堂大学大学院の鈴木良雄准教授によると「スポーツサプリメントのヘルスクレームとして利用が想定される“回復”や“パフォーマンスの向上”は使用者が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調変化の改善そのものであるため使用可能」という見解もあり、今後に向けて期待をかける企業も少なくない。スポーツニュートリション素材にスーパーフードを取り入れる欧米からの潮流も始まっており、現在はココナッツ、チアシード、赤ほうれん草やビートのエキス、ベリー関連などの機能性素材の販売に着手する企業も増えている。