「独自の食品素材で特許をとった。せっかくならば素材のストーリー性だけではなく、独自の機能性も消費者に伝えたい」-機能性表示食品の受理総数が887品(今月8日時点)を超える状況の中、関係者らからはそのような声が多く聞かれるようになった。すでにその素材で学術論文がある場合には、SR(システマティックレビュー)によって機能性を客観的に示すことができる。先行する論文がない場合や、素材自体は既知であっても独自に新しい機能性をうたいたい場合には、臨床試験によって示すことができる。機能性表示食品制度のスタート以来、“従来トクホ型”以外の機能性も表示することが可能になったため、食品企業や健食企業による素材開発の活発化と合わせて、素材の機能性を客観的に示すための臨床試験やSRのニーズが伸びている。食品CROのなかには「設立以来の増収増益」というところもある。ただその一方で、「臨床試験には莫大なコストがかかる」というイメージから臨床試験を敬遠したり、「SRとはそもそも何なのか」と具体的なイメージを掴めない企業があることも事実だ。臨床試験やSRをめぐる現状を追った。
SRとは「最も客観的な評価手法」
機能性表示食品制度がスタートして以来、“SR(システマティックレビュー)”という言葉が業界関係者らの間で多く聞かれるようになった。「健食業界で“SR”という言葉がこれほど普及している国は世界でも日本がダントツ」と指摘されるほどだ。機能性表示食品の受理総数は現在255社887品(今月 8 日時点)となっているが、SRによる届出が94%を占める。
SRとは、世界中にある論文を網羅的に集め、それを客観的に分析・評価することをいう。論文には肯定的なものだけでなく、否定的なものも含まれるため、「最も客観的な評価手法」ということもできるという。
機能性表示食品制度ではSRによる評価が食品の機能性を示すデータとして認められているため、わざわざ最終製品を使った臨床試験を実施しなくても、消費者に機能性を伝えられる方法として普及し始めている。当然、臨床試験に比べてかかるコストも低いため(数百万円)、先行研究がある場合には手っ取り早い方法といえそうだ。
本当に客観的なのか?
ただ世界中から網羅的に論文を集めてくるとはいっても、「恣意的に都合の良い論文のみを集めてしまう危険性がある」とも指摘される。機能性表示食品の届出は企業の利害が絡む問題であり、一歩間違えば「企業の自己責任」という制度の根幹を揺るがす問題にもなりかねない。
実際、昨年 3 月に消費者庁が発表した「届け出られた研究レビューの質に関する検証事業報告書」では、「届出SRにおいて、不都合と考えられる一次研究を除外するために、検索式などであえてヒットしないように操作される懸念がある」と指摘されており、「より網羅性の高い検索をす・・・
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独自素材ではやはり臨床試験
SRがいいことばかりのように見えるが、先行研究のない素材では実施することができないため、独自に発見・開発したような素材では臨床試験を行う必要がある。また既知の素材であっても他社とは違う独自の訴求を打ち出したい場合には、やはり自ら臨床試験を行う必要がある。臨床試験の費用は数千万円とSRに比べて高くはなるが、機能性の部分で他社と差別化できるなど、それに見合うリターンも大きい。
特に消費者から関心の高い脳機能分野や血管関連分野においては、各CROで評価系の整備などの新しい動きが始まっている。論文化されていないため詳細はま・・・