健康・美容を目的に日常生活で積極的に体を温める“温活”がブームになりつつある。冷え症状や低体温の解消に留まらず、抗ストレス、疾病予防、美容・アンチエイジング、介護予防―― など、体を温めることで得られる数々のメリットに対する消費者の認知度も高まり、女性層を中心に温活実践者が増加している。専門家が長年警鐘を鳴らしてきた夏場の温活の重要性についても理解が進みつつある。温活実践者の増加は、産業界にとっても追い風となっており、従来の冬場を主戦場とした温活サポート商材の市場が、最近は夏場も取り込み、さらなる拡大を見せている。
注目高まる「ヒートショックプロテイン」
古くから「冷えは万病のもと」と言われ、冷え対策商材の市場は年々拡大してきた。近年は、冷え対策にとどまらず、体を温めることで得られる数々のメリットにも注目が集まっており、日常生活で積極的に体を温めることを推奨する“温活”と呼ばれるライフスタイルがブームとなりつつある。昨年には学識者と大手食品メーカーがタッグを組み、食物繊維豊富な温かいスープ朝食で腸を温めるライフスタイルを提唱する「腸温活プロジェクト」もスタートするなど、各所で「温活」という言葉を見る機会も増えている。
体を温めることは、血行促進に伴う冷え症状や低体温の改善はもちろん、ストレスで乱れた自律神経バランスの調整、発汗によるデトックス作用、深部体温上昇に伴う免疫力や自然治癒力、基礎代謝の向上、さらに肥満やむくみ、シミ・シワ、髪のパサツキなど美容に対する弊害も解消でき、「温活こそ最高のアンチエイジング」とする専門家も。また近年の研究では、腸内環境を整える食事と腹部への温熱、リハビリとの併用で、認知や記憶など脳機能の向上・改善や腸脳相関に伴う手足のマヒ症状改善、運動器の機能向上、全身加温による軽度認知症の改善といった報告も見られ、介護分野でも注目され始めている。
なかでも 2 月の「健康博覧会2017」の講演で、修文大学教授の伊藤要子氏が紹介した「ヒートショックプロテイン(HSP)」による生理作用は今後、温活を語る上で重要なキーワードとなる。HSPは熱ショックタンパク質とも呼ばれ、入浴や温熱療法によって体内に増加するタンパク質のこと。その生理作用には傷付いた細胞を修復、ストレスから細胞を守る、白血球(リンパ球)の増加やNK細胞の活性化などに伴う免疫増強、抗炎症――など様々。
乳酸の産生抑制効果などもあることからトップアスリートの間では以前から、運動前後のボディメンテナ・・・
詳しくは2017年5月17日発行・1620号紙面で(年間購読が必要です)
夏場の温活実践者も増加
健康・美容意識の高い消費者を中心に、“温活”実践者が増えている中、近年は夏場の温活にも注目が集まっている。冷え研究の専門家は以前から「本当に怖いのは夏の冷え」と警鐘を鳴らしてきた。夏場は気温が高いことから、多くの人が冷えに対して無防備になる。まして昨今は温暖化の影響か、真夏日や猛暑日を記録する日数が増えている。クーラーの過剰利用、肌の露出が多い服装、冷たい食品・飲料の過剰摂取――など、知らず知らずの内に体を冷やす行為をしがちだ。これが秋口からの様々な体調不良に繋がる原因とし、「1日1回は体を温めるように」と提唱してきた。実際、夏場に冷えを感じている人は少なくなく、民間企業の実施した調査では、特に女性の約8 割が夏場でも冷えを感じていると・・・
詳しくは2017年5月17日発行・1620号紙面で(年間購読が必要です)