米アマゾンは自社のプライベートブ ラ ンド(PB)として、2014年から「Amazon Elements」を展開している。年会費を払うことで数々の会員特典を得られるプライム会員向けのサービスで、日用品に特化して品ぞろえを進めている。当初はオムツやおしり拭きといったベビー用品からスタートしたが、今年からはサプリメントの取り扱いを開始。巨大ネット通販業によるPBサプリの投入は、製品の透明性という点で米国のサプリメント業界に一石を投じたと話題になっている。
現在、Amazon Elementsのサプリメントはビタミンやミネラル、ウコンの 5 種類。これらのコンセプトはPB製品のもつ競争力としてフォーカスされがちな低価格訴求ではなく、品質の高さや厳格な管理、徹底したトレーサビリティーに代表される安全性の担保にある。同ブランドで使用する原材料は、グルテンフリーで大豆などアレルゲン物質を含まない上、合成着色料および保存料、香料など不使用であることがポリシー。ビーガンにも安心して使ってもらえるような製品に仕上げた。さらに米国内のGMP認定の工場で製造されている点も品質面での強みだ。
購入者からは購入製品の原料原産地や製品の分析結果(原料の含有量)など詳細な情報を得られる点が好評。スマートフォンのカメラによってラベルに印字された 2 次元コードを読み込むことで配合された特定の成分の分析結果や基原原料の情報、製造日、製造場所、配達日などを把握。さらに配送状況も追跡できる。原材料から添加剤に至るまですべての成分の原産地も明 示 さ れ て お り 、ストーリーについても触れられている。
巨大ネット通販業のアマゾンが自社製品でサプリメントの原材料や製品情報を見える化したことにより、米国ではトレーサビリティーの重要性が再燃しているようだ。事情に詳しい国内商社では「画期的なシステムとの呼び声が高い。原料メーカーは販売力のあるアマゾンの参入を歓迎する一方、同種のサプリメントをアマゾンで販売しているメーカーにとって目下悩みの種になっている。バッヂごとの原料情報などがリアルタイムで確認できる上、価格もNB品より多少安いというのは大きな脅威。重要な販路であるためアマゾンから商品を引き上げるとは聞いていないが、複雑な心境なのは確か」と話している。
この件とは別にここ数年アマゾンは米国や欧州の一部で業務用通販に注力しており、大手のみならず小規模企業からも在庫管理や決済代行などの点で支持されている。現時点でサプリメントの原料販売はしていないが、食品原料を取り扱う可能性については以前から指摘されていた。前述の商社筋では「ベンチャー企業にとっては大きなチャンス。ただし商流や商慣習の違う海外だからなせる業で、流通網が複雑な日本の実態にはそぐわないかもしれない」と述べている。なお、これらの海外向けサービスを日本で展開する可能性についてアマゾンジャパンでは「現時点で、国内展開していないことに加え、米国・日本とも今後の計画などについては回答できない」とコメントしている。