会社から歩いて10分ほどということもあり、「沢田教一展」(高島屋、朝日新聞)を覗いた。「安全への逃避」はピューリッツァー賞を受賞、ベトナム戦争の行方と共に、今日のベトナムと日本の絆にも繋がる感動的な写真だ。
時間帯から空いているかなと思ったが、ファンが多いのか、写真ブームの影響か、混雑していてやはり高齢者が多かった。1975年前のサイゴン陥落までの20年にわたるベトナム戦争の時代に青春を過ごした人々は、当時の沢田教一や石川文洋などの写真や記事を通じて、色々な世界を知ることになった。米国が初めて負けた戦争のサイゴン陥落のニュースが世界に流され、そのシーンは還暦を超えた人々の心に焼きついた。のちに蝶々夫人がベースと言われるミュージカル「ミスサイゴン」もそんな一幕を盛り込んで、多くの人の心を捉えた。
日本とベトナムは、明治の日本とトルコの絆のように、時には「海賊と言われた男」で紹介されたイランと出光、そして日本との友好のように、糸が結ばれてきた。
沢田教一展では、石川文洋が一文を寄せていた。ケネディ大統領が、’報道に携わる人々を大切に扱うように’と指示を出してくれていたことが、ジャーナリストが最前線で活躍できた理由だったと。色々な意味で、最初で最後の戦争報道であったとも。皮肉にも、米国はベトナム戦争での残虐な行為を世界に報じられ、国際的な信頼を失うのだが、ジャーナリストの活躍の裏にケネディの思いが働いていたというのは、皮肉でもあり、民主主義の懐の深さでもあるのかと。