化学構造が何万通りもあり、多様な機能性があるとされるペプチドの研究がすすんでいる。第5回国際食品由来ペプチド学術交流会議(IACFP)が10日、大阪市で開催され、研究者らがペプチドに関する研究成果を発表した。主催した中国食品発酵工業研究院の蔡木易氏は、「中国では、高齢化が進み、栄養や機能性食品の開発は、第13次5カ年計画においても重要なテーマになっている」と述べた。また、「中国の経済は、急速なスピードで発展する時代から、緩やかに発展する時代に変化している。人々のニーズは、お腹いっぱいに食べることから、健康に良いものを食べることへシフトした」と語り、ペプチドに関する研究が活発に行われている現状を話した。
中国の研究者らは、ペプチドを用いた栄養介入などについて報告。タンパク質は、摂取後にアミノ酸やペプチドに分解される必要があるため、消化器官への負担が大きいうえ吸収にも時間がかかる。一方、ペプチドは、ほとんど消化する必要がなく、素早く吸収されるため、高齢者や病気の人でも効率よく吸収できる栄養素として注目を集めている。がんの治療において、適切な栄養介入があれば合併症の発症率が下がることが知られており、胃がんなどの患者に対するペプチドを用いた栄養介入の臨床試験の症例が集積され始めているという。天津医科大学の巴一教授は「症例数が増えれば、ペプチドによる栄養介入の有効性が明らかになるだろう」と話した。
京都大学の佐藤健司教授は、海洋性コラーゲンペプチドの吸収性と皮膚に対する効能について研究成果を発表。コラーゲンペプチドは、体内に吸収されるとアミノ酸に分解されると考えられてきたため、コラーゲンペプチドの摂取による肌の状態改善などの効果に対しては疑問が呈されてきた。佐藤教授らは、摂取したコラーゲンペプチドの一部は、アミノ酸に分解されず、ペプチドのまま血中に移行することを確認。ペプチドを摂取することで肌の修復や、関節の状態改善につながるメカニズムが解明されつつあるとした。
九州大学の松井利郎教授は、オリゴペプチドの吸収性と血圧調整作用に関する研究成果について講演。血圧上昇に関わるACE阻害作用が確認できれば、ペプチドの摂取で血圧調節作用があると考えられてきたが、体内における吸収効率や、代謝などの解析が重要であると指摘し、これまでに実施した吸収性試験などの結果を発表した。血圧調節作用があるとされる種類のペプチドは、血圧の収縮期と拡張期のいずれにも影響するが、「今後は、いずれか特定の血圧だけに作用するペプチドも見つかる可能性はある」と話した。