昨年9月。発起人総数1638名という膨大な署名を集めて新たな医学団体が発足した。新組織は「日本医療学会」。発起人代表には元総理の中曽根康弘氏、聖路加国際病院の日野原重明氏らが名を連ねる。発起人の中には一般市民のほか政界、財界、文化人なども多数参加している。常任幹事会議長には、東京女子医科大学教授の笠貫宏氏が就任した。学会と言っても学術交流だけの組織ではない。“国民による国民のための医療の実現”をスローガンに、国民各層から意見を募り、インターネット討論会などを通じて新たな医療・健康政策を練り上げるシンクタンク機能をもつ。また、市民参加を重視していることから、市民と行政の橋渡し機能という側面もある。
活動の中心となる電子討論は、さながら国民参加のバーチャル・カンファレンスだ。すでに同学会のウェブには、がんの終末医療における在宅医療の重要性を訴える声や、特定健診・保健指導の延期を求める意見が寄せられ、それに対する反論や異論も相次いでいる。
医療技術や医療環境、社会構造の急速な変化や、医療ニーズの多様化などに伴い、医療サイドと市民サイドのインフォメーションギャップが拡大し、これが医療不信につながっている。このため学会ではこの解消を目指し、幅広い市民の声を吸い上げ、常任理事会で検討しシンポジウムとして取り上げていく。さらには様々な分野から集めた情報や議論の根拠資料については、自由に閲覧できる電子図書館(eライブラリー)を設け、健康教育・啓発などに力を注いでいく。