昨年末、環境省は、温泉の健康や観光への有効活用を目指す「新・湯治」プロモーションの推進を提唱した。まず、温泉地で過ごす効果を把握する調査のため、調査方法を今年度中に取りまとめる。山本室長に聞いた。
ー「新・湯治」の取り組みや目指すゴールについて
「新・湯治」の提言では、温泉地全体での療養効果を把握することが重要であることが指摘されています。それを受けて、環境省では有識者会議を開催して調査方法やフォーマットをまとめているところです。現在、予定の3 回のうち1 回を終えたところです。今年度中にその内容と方法を決め、今年5 月の別府(大分県)での「第3 回全国温泉地サミット」の首長会議の中でご紹介し、温泉地の賛同を頂こうと考えています。実際の調査実施やその取りまとめや発表は来年度ということになるでしょう。これから、全国の温泉地と、「新・湯治」のゆるやかなネットワークを作っていく段階です。調査は、そのためのベースであり、次のステージへのきっかけだと考えています。
ー「エビデンス」のレベルについて
現時点でのエビデンスというのは、各温泉地が容易に取ることができるレベルのものを考えています。医療関係者でなければ取れないというものではなく、今回は、全国の温泉地で過ごした利用者の共通の効果として、「温泉で気持ちよくなる」「リフレッシュ出来た」といったテーマが妥当と考えています。利用者が主観で答えられる内容になると思います。このことは、国の健康施策「健康経営」や「ストレスチェック義務化」を背景の下で、温泉地がメンタルヘルスにおいて効果的な受け皿となれること、そして企業の保養場所としての活性化への期待もあります。まずは、この取り組みが、賛同頂く温泉地にとって、温泉の健康的な活用への意識を持った温泉地の証といったメリットの感じられるものにしていきたいと思います。
もちろん、このベースとなる調査に、温泉地ごとに項目に工夫を凝らして追加していくこともよいでしょう。温泉地の特性を調査できるきっかけとして、ぜひ、各温泉地の魅力発信にも役立てて頂きたいと思います。
山本 麻衣(やまもと・まい)
山口県出身。平成7年環境庁(当時)入庁。環境省本省や地方環境事務所等において主に国立公園や野生生物の保護管理を担当、前職は長崎県に出向し自然環境課長として勤務。
平成29年4月より現職。
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