健康産業オンライン

ASEAN商標のグローバル化  松本康伸弁理士(特許業務法人三枝国際特許事務所)

健康産業界にとって、知的財産の保護は重要テーマの一つだ。UBMジャパン主催・健康博覧会(1月31日~2月2日・東京ビッグサイト)においても、特許をテーマとしたセミナー(1月31日14時~「用途特許の効力から学ぶ知財戦略と注意点」中野睦子弁理士1月31日15時10分~「機能性表示食品の販売戦略と特許戦略との関連性分析」が開催される。

ここでは、三枝国際特許事務所の松本康伸弁理士による商標権の解説記事をお届けする。

健康産業新聞

特許業務法人三枝国際特許事務所 松本康伸弁理士

日本企業にとって、ASEANは、今や中国に次ぐ海外進出先となっている。2015年末にASEAN経済共同体が発足し、総人口6億5千万人、GDP2兆4,000億ドル、2062年まで人口ボーナス期が続くと試算される巨大市場が生まれ、外国企業のASEAN進出は増加の一途を辿っている。日本企業にとっても、タイを中心にこれまで生産拠点として進出してきたが、大きな市場の一つとしてその重要性を増しつつある。このようなASEAN経済のグローバル化とともに、ASEANの知的財産とりわけ商標の分野においてもグローバル化が進んでいる。

松本健伸弁理士「ASEANで商標権を取得する外国企業の急増が予想される」(写真提供:特許業務法人三枝国際特許事務所)健康産業新聞

商標の重要性

ASEANにおいて事業展開を進めるにあたっても、いわばインフラとしての商標登録・商標権は重要である。主に中国からの模倣品流入も多く、模倣品対策のために商標権は必須であるし、商標権は早い者勝ちの権利であり、第三者に抜け駆け的に登録されてしまうと、事業展開にあたって大きなリスクを背負うことにもなるからである。

マドプロ加盟

商標権は、進出先の国々での取得が必要であり、各国ごとに商標出願をおこなうこともできる。ただし、この方法だと、コスト的に負担が大きく、手続的にも煩雑になる。この各国毎の権利取得を簡便化する手続として、マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願(マドプロ)がある。現在、商標のグローバル化を支える大きな枠組みとなっており、マドプロを活用すれば、WIPO(世界知的所有権機関)に1通の申請書を提出することで、権利化を望む国へ出願手続きを行うことができる。ただし、審査は各国ごとに行われるので、その国で保護されるかどうかは各国ごとに異なる点に注意は必要である。

1999年12月に日本がこの条約に加盟した当時は、ASEAN諸国に加盟国はなかった。ASEAN経済共同体の発足を契機に加盟が加速し、これまでのシンガポールやベトナム、フィリピンに加え、昨年11月にはタイで、今年1月にはインドネシアで発効したことで、マレーシアとミャンマーを除く8カ国でマドプロを活用できるようになった。マレーシアもミャンマーも近々加盟する見込みだ。ASEAN市場のグローバル化及びASEAN商標のグローバル化により、ASEANで商標権を取得する外国企業の急増が予想される。

健康博覧会1月31日~2月2日開催

社名・ハウスマーク

海外展開するにあたっては、少なくとも、自社の社名(例:トヨタ自動車株式会社)・ハウスマーク(例:TOYOTA)は安全に使用できるようにしておきたいところである。

商号登記と商標登録は別物である。社名やCIマーク・ハウスマークをブランドとして活用するためには、商標権を取得しておきたい。ここで、社名については注意が必要である。というのは、特にアジア圏は、社名商標の登録について、国によってかなり扱いが違うからだ。

例えば、タイやマレーシアは、「●●●Co., Ltd.」や「●●●Inc.」といった商標を登録するには、「●●●」の部分が特別なデザイン等で表示されているか、その国で有名になっていなければならない。また、ベトナムでは、日本語だけの商標(トヨタ自動車株式会社)は登録できない。英語社名と結合させて登録するといった工夫が必要になってくる。

以上のように、ASEAN商標全体のグローバル化が進む一方で、各国は独自の運用を維持しているのも事実である。手間やコストの削減には、各国の個別事情を考慮しながら、グローバル化をうまく活用していくことになりそうだ。

最後に、ASEAN商標に関する便利なデータベースを紹介しておきたい。

EUIPO(欧州連合知的財産庁)が管理する無料データベース“ASEAN TM view”http://www.asean-tmview.org/tmview/welcome)であり、ASEAN各国の商標データを容易に検索・入手できる。商標権の取得の可能性をある程度予測することができるとともに、自社の商標が無断で第三者に権利化されていないか知ることもできるので、ASEAN商標戦略の一次的なフィルターとして活用していただきたい。

松本 康伸(まつもと・やすのぶ)

特許業務法人三枝国際特許事務所パートナー弁理士。

上智大学法学部国際関係法学科卒。2004年弁理士登録。2005年三枝国際特許事務所入所。国内および外国での商標や意匠、特定不正競争行為・著作権等を含む知的財産権法務などを専門分野とする。日本弁理士会四国支部主催「商標の実務(アジアにおける地域ブランドの保護)」、日本知的財産協会主催「アジア主要国の商標制度と実務」など講演も多数行っている。

特許業務法人三枝国際特許事務所のHPはこちらから:https://www.saegusa-pat.co.jp/

健康博覧会・知財関連セミナー

2018年1月31日 14時~14時50分 「用途特許の効力から学ぶ知財戦略と注意点」 中野睦子弁理士(特許業務法人三枝国際特許事務所副所長)

2018年1月31日 15時10分~16時  「機能性表示食品の販売戦略と特許戦略との関連分析」 春名真徳弁理士(ユニアス国際特許事務所パートナー弁理士)

健康博覧会は、東京ビッグサイトにて1月31日(水)~2月2日(金)開催。国内最大の健康ビジネストレードショーです。

健康博覧会の詳細はこちらから

行政・業界ニュース

企業ニュース

特集

PAGE TOP