日々、美への新しいサービスや商品が登場する中、もはや「美」を実現する手段は化粧品に限った事ではない。美容ジャーナリストの奈部川 貴子さんに美容トレンドを聞いた。「便利で、手軽で、効果があれば何でも良い、と考える消費者も増えている中、化粧品メーカーも生涯顧客を作りづらい時代になってきた」と語る。
今年の美容トレンドについて?
化粧品だけではなく全体のトレンドとして「ボーダーレス」は、非常に顕著に思えます。昨年あたりから、化粧品ではスキンケアとメイクを融合させたハイブリットアイテムがすごく出てきています。
わかりやすい例では、韓国コスメの「トーンアップクリーム」。韓国の化粧品市場は世界のトレンドを牽引するほどで、特に10代の若い人の間でこの商品が人気です。実はこれは日本にもあるようなもので、美白のスキンケアと下地と日焼け止め、BBクリームなどが合体したものです。朝のルーティンは最低限これ一個だけで外出が出来てしまう。それが韓国で10代の子から火がついて、朝はこれだけの人もいれば、そのあとファンデーションを塗る人もいて、とにかく流行っています。けれど、これがスキンケアかメイクかと聞かれるとハッキリしない。つまり新しいルーティンのジャンルなのです。実は、この傾向が日本でも昨年あたりから始まっていて、例えば「スキンケアハイライター」。塗った時から肌をキレイに見せるスキンケア商品です。これもアイテムやカテゴリが仕分けしづらい。特に外資ブランドのランコムとかジバンシィなどで見受けられます。
従来のアイテムやカテゴリで括れないものが出てきたと?
メイクとスキンケアにまたがっているというのが大きな特徴です。だからスキンケアなのにパールっぽいものが入ったり肌をきれいに見せる効果があったり。メイクなのにスキンケアであり、ファンデーションとは言わない。そんな不可思議なアイテムがここ最近多くなっているのです。
例えば、フローフシの「38℃」というリップティントも、ティントと言いながら、リップケアの美容液なのかメイクなのかよくわからないアイテムですよね。一概にティントブームと決め付けるだけでは済まないアイテムたちが2018 年に春に向けて沢山出て来ます。対象はやはり20~30代です。多機能で楽なのです。楽なものは結構広まります。だからボーダーレスというのは、一つはメイクとスキンケアのボーダーがなくなったということです。マスカラとまつ毛が長くなる美容液が合体したものが昨年ベストコスメ賞をたくさん取りました。これもメイクとスキンケアの合体です。
ボーダーレスというかカテゴリーレスは、もはや新しい価値なのです。ボーダーレス化は安い製品よりも高級ブランドで起きています。いろんな機能を両立させる、二つのものを合体させるには高度な技術が必要だからでしょう。ボーダーレスは、多機能化のために起こったと言えます。カテゴリの壁を取り払って、結果的に両方にまたがるアイテムが開発されていることだと思います。開発側も、これまではスキンケアだけを作っていればよかったのに、「ハイライター」みたいなものが登場してくるとメイクの開発力も必要になって来るでしょう。いろいろな視点が必要になるのは確かです。
例えば「スキンケアハイライター」で言うと、ほんのり白く色がつくとか、パールがこう光って見えるとか、見てわかりやすい。本来スキンケアは成分がどうだとか語らないとわからないもの。でも見るからにローズやピンクパールの色がついたスキンケアグロークリームですと言われたら、なんとなく血色がよくなる感じがする。すぐにでも、ほんのりピンクになるような気持ちの高揚感を与える良さもあるのでしょう。
その他に気になるキーワードは?
今は化粧品の質も高く、良いものは溢れています。その中で選ぶにあたって、いかに自分に合うかは大きなテーマとなります。最近特に強く言われるようになった「パーソナライズ」はこれからも重要なワードとなっていくでしょう。一人ひとりへの提案です。
今年展開される資生堂の「Optune(オプチューン)」もその1つでしょう。IoTによるパーソナライズスキンケアで、その時々の肌状態や肌環境の変化に合わせて肌の手入れをするようになります。もっと「私にピッタリ」を提供するために、オーダーメイド感を出した商品やサービスが今後も増えていくでしょう。
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奈部川 貴子 なべかわ たかこ
美容ジャーナリスト、美容アナリスト。ソレンセン式フェイシャルリフレクソロジー認定セラピスト。株式会社ベイズガーデン代表を勤める。
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