構造がエストロゲンに似ていていることから、女性の体調を整えるとして注目を集めている成分「エクオール」。現在、大手メーカーからもエクオールを含む製品が多数登場している。
エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインから腸内細菌により分解・産生される代謝産物。つまり、食事やサプリメントなどから大豆イソフラボンを摂取することで、体内で生産することが可能だ。だが、近年、エクオールを体内で作れる人とそうでない人がいる事が解明され、それがTV番組や女性誌で取沙汰されるやいなや、“日本人の約半分がエクオールをうまく作れない”というエビデンスとともに、健康・美容意識の高い女性を中心に大きな話題となった。
この“体内で作れる人、うまく作れない人”を、簡単に調べることができる郵送型検査キット『ソイチェック』(ヘルスケアシステムズ)が、人気商品となっている。発売は2012年だが、2015年のNHKのTV番組をきっかけにエクオールが一気に認知され、販売数は右肩上がり。2017年1月までの利用者は累計で10万人に達しているという。ある意味かなりニッチな本製品の開発秘話やヒットへの道のりなどを、細谷 吉勝氏(取締役 営業企画部 部長)、大澤 裕子氏(営業企画部)に伺った。
―――『ソイチェック』開発の発端は?
ヘルスケアシステムズは、抗酸化食品について研究している名古屋大学 名誉教授 大澤俊彦先生と2009年に始めたベンチャー企業です。大学で培った研究データと検査技術に基づいた検査キットの開発、販売、予防領域での各種研究開発、エビデンス提供を行っています。実は大学の研究室には、製品として世には出ていないものの、素晴らしい研究結果がたくさん埋もれています。それはあまりにももったいないという発想も、起業理由の1つ。そして、その埋もれたデータの1つが、大豆イソフラボンから生産されるエクオールについての研究でした。生産できない人がいるということも含め、色々な意味でもったいない、と。
―――日本人の2人に1人はエクオールが作れないと聞きました。
そうです。エクオールは、大豆に含まれる大豆イソフラボンと腸内のエクオール産生菌によって生産されますが、日本人の2人に1人はエクオールが作れないということが判明し、さらに、作れていても効果を期待できる量に達している人はさらに少ないことがわかりました。当時でもエクオールの測定自体は可能でしたが、研究機関でしか行えず、時間も手間もお金もかかる検査でした。2009年のある日、教授から「エクオールをもっと簡単に測定できる装置をつくれないか?」という依頼があり、そこから研究が始まったのです。
―――2012年のソイチェック誕生まで、開発において難しかった点は?
エクオール生産の理屈は解明できていたので、それをいかに簡単かつスピーディーに、そして安価に測定・提供できるかという点がポイントととなりました。もちろん、測定の正確さはそのままに。そのうえで研究を重ね、少量の尿からエクオールを測定する世界初の技術を開発。腸内細菌によって産生されたエクオールは、体内で吸収され作用した後、一部が尿中に排泄されます。この尿中のエクオール量を測定することで、腸内のエクオール産生菌がどれだけ存在するかをチェックします。この測定技術を製品にしたのがソイチェックなのです。
今まで研究機関などを介してしか知ることができなかったエクオールの数値が、尿を郵送するだけでわかるようになったというわけです。
―――――“エクオールを作れる、作れない”という結果に、一喜一憂する女性の投稿がネット上で多く見られます。結果はどう受け止めるのがよいでしょうか。
ソイチェックの測定結果は、尿中に含まれるエクオールの量によって1~5のレベルで報告されます(下図参照)。目安として、レベル1~2だと“作れていない”、3~5なら“作れている”となります。
少し詳しくいうと、尿1リットルあたりに1μM(マイクロモル)以上のエクオールが含まれていれば“作れている=レベル3~5”と判定します。とはいえ、作れていないと判定された場合でも、一生作れないという訳ではない場合があるのです。現在、10種類のエクオール産生菌がわかっていますが、まだ未知の産生菌が存在する可能性があります。また、食生活や生活習慣の見直しによる腸内フローラの変化も期待できます。腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つに分類されますが、7割が日和見菌(善悪どちらにもなり得る菌)だといわれています。ですから、結果に一喜一憂しておしまいというのではなく、よりよくするための行動変容につなげてほしいと思っています。腸内細菌のエサとなる食物繊維や、日常的に大豆製品を摂取することで、エクオールの生産量は変わることがあります。
―――――大豆食品、つまり大豆イソフラボンの摂取量で生産量は変わるということですね?
“作れる人”なら変わります。また、大豆イソフラボンは、摂取後1~2日で尿から排泄されるので、一度に多く摂取しても効果を持続させることはできません。適量を毎日食べ続けることが大事です。これは、食事から摂取する場合でもサプリメントから摂取する場合でも同じことが言えます。調査したところ、大豆食品を毎日食べている人とあまり食べていない人では、エクオールを作れる人の割合が2倍も違っていたのです。
さらに付け加えたいのは、食習慣によって変化する部分が多いので、例えば親がエクオールをうまく作れない場合、子も同じ可能性が高いということです。腸内フローラの形成は、離乳期から小児期の食生活に大きく影響されると言われれています。検査結果のレベルが1~2だった方で小さい子どもがいるならば、ぜひ家庭での食事を見直していただけたらと思います。
いずれも、行動変容後にもう一度検査してみるとよいかもしれません。
――――2017年1月までの利用者累計が10万人を突破しましたが、現在、今後の見込みはいかがでしょうか?
2012年の発売当初の利用者数こそ200人程度でしたが、婦人科や美容外科の医師が集まる学会やセミナーに参加したり、全国を回って講演するなど啓蒙活動を行って認知度を高めてきました。その結果メディアの後押しもあり、利用者は10万人に達しました。ネットでの販売のほか、全国1500を超える医療機関、健診施設、調剤薬でもソイチェックを採用いただいています。今後は20万人を目標とし、引き続き啓蒙活動を続けていく予定です。また、研究機関発の弊社としては、エクオール製品を手掛けている各社と何かしらの形で協力しあうことでより市場を盛りあげることができればと考えています。
今後は、ソイチェック利用者専用ページで、結果についての統計データや生活改善へのアドバイス、レシピなど、女性が健康的な毎日を過ごすために有益な情報を充実させる予定。健康意識への変化、そして行動変容への動機づけの一助になればと願っています。
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