日本の米どころとして知られる新潟県、すぐに「コシヒカリ」が思い浮かぶが、最近では機能性米の栽培も進んでおり、さらには日本酒「獺祭」に使われる酒米「山田錦」の栽培も始まっている。「これからは米も機能性の時代だ」と語る豊永有氏(エコ・ライス新潟)は、コシヒカリにこだわらず、自分たちの田んぼを守っていくという意識を持っている。有機栽培農家が集まったエコ・ライス新潟の最近の取り組みは、低アレルギーからグルテンフリー、ハラルまで、多岐にわたっているようだ。
―機能性米に取り組み始めたきっかけは?
中越地震の被災後、避難所へ行ってみると、透析患者の方々がご飯を食べられないという状況を目の当たりにした。その時考えたのが、新潟コシヒカリは日本一といわれていても、高齢化してくると食べられない方が増えてくるだろう、ということだった。
そのためになにをするか、ということで、機能性米の春陽であるとか、越のかおりであるとか、高アミロース米であるとか、いろんなものを作って、それを加工していこう、ということになった。
さらにそれを非常食にするとなると、やっている人が基本的にいない。そうすると、自分たちのマーケットを自分たちで作っていこう、ということになった。
―そうやってまずはアルファ米の商品がでてきた。
透析患者向けのアルファ米は、日本では私たちだけしか作っていない。今回の熊本地震の被災者のなかにも、透析患者は6300名ほどいたといわれる。
大手が出ていくようなところだと、私たちのような零細は負けてしまうが、この部分では必ず一定のマーケットがある。そういうニッチなところで生きていこうということで、機能性米の製造特許も取得した。
―東日本大震災では?
東日本大震災をきっかけに取組み始めたのが、アレルギーフリー。私たちは米農家が中心の団体なので、米を中心にバリアフリー性を広げていこう、ということになり、アレルギーフリー、グルテンフリー、さらにいまはハラルを進めている。
私たちの最終目標は田んぼを守ることであり、ここで農業をやっていく、ということ。そのためにはコシヒカリにこだわる必要はないと考えている。一昨年からは、新潟では無理だといわれていた酒米・山田錦を作り始めた。
越のかおりという高アミロース米をおいしく食べるプロジェクトにも参加しており、バリアフリー性の高い米をキーワードに、新潟に新しい価値を作っていきたい。これからは米も機能性の時代だと考えている。