中国広東省東莞市で21日から開かれている第四回国際食品由来ペプチド学術検討会(IACFP)では、アイワフーズ、赤穂化成、東京大学などと共同研究を進める前橋工科大学の薩秀夫准教授が「オリゴペプチドの上皮細胞における吸収及び生理機能」と題して発表を行った。健康産業新聞からの取材に応じた薩氏は、「ペプチド分野にさらに注力することを検討中」としたうえで、ペプチドの機能性に関する認知のアピールが今後のポイントになるとの考えを示した。
―アイワフーズや赤穂化成との共同研究の当初の目的は?
もともとは東京大学の田之倉先生から連絡があり、腸管の吸収で相談のある企業があるとのことで、お誘いを受けた。ミネラルの吸収を促進するような成分、できればペプチドを探すような研究を始めたいとの話でスタートした。
―先生は以前からペプチドの研究を?
以前にやっていたことはあるが、基本的には腸管吸収全体で、むしろトランスポーターが研究の中心になっている。
―当時から共同研究の最終的な方向性は見えていたか?
特定保健食品や機能性表示食品はなかなかハードルが高いので、そこまでいかなくても、基礎的な知見として、ミネラルの吸収が上がるということが分かれば、販促としての意義があるということで、ゴールとしては必ずしも最終的な商品化を目指すという形ではないということでスタートした。
―なぜ中国がペプチド分野においてはリードしているのか?
中食営科は半官半民の会社と聞いているが、やはり国が資本を出して研究をしているというのは大きいと思う。
※中食営科:中国食品発酵工業研究院が主体となったペプチド生産基地の一つ。広東省東莞市を拠点とする。
―ただ基礎研究としては日本に強みがある。追いつくのもそれほど時間はかからないのでは?
もともと基礎的な研究で日本には優れたものがあるが、資本的な点で見れば、日本では大学の研究費が削られているということもあり、なかなか大規模での研究というのは展開できない。
その点、中国のペプチド研究と言うのは、国のバックアップが十分あるという点が強みだ。日本もそのあたりの資本がしっかりとあれば、中国に追いつくというのは可能だと考えている。
―米国でもペプチドは新しい波として注目されつつある。日本でも今後、消費者の認知が重要なポイントになりそうな感じだが。
実際、特定保健用食品や機能性表示食品のコーナーに行けば、やはりポリフェノールや食物繊維などの宣伝PRが強く、どうしても消費者の関心はそちらに向かう。そのあたりは今後、日本で機能性ペプチドの商品が出た時に、いかにマーケティングをするかにかかっていると思う。
―ペプチド研究の面白さは?
もともと学生時代には、タンパク質がアミノ酸に分解されて吸収される、ということだったが、いまではペプチドトランスポーターも発見され、ペプチドの形で吸収されるということが分かってきた。
今後はそれをどう応用していくかだ。アミノ酸より吸収性がよく、さらにペプチドは様々なアミノ酸がくっついているため、アミノ酸バランスもよいと言われている。ただ一般消費者にそのあたりはまだ理解されておらず、そこをいかに認知してもらうか、ということがポイントになると思う。
―IACFPに参加してどうか?
研究室もフラボノイドやポリフェノールの研究が主体になっていたが、会議を通してペプチドの面白さや新しい知見を知ることができ、今後はペプチド研究もより力を入れようと検討しているところだ。