中国広東省東莞市で21日から開かれている第四回国際食品由来ペプチド学術検討会(IACFP)では、今年4月に設立された健康長寿科学栄養研究所(ワタミ株式会社)の麻植有希子所長が、「混合オリゴペプチド製剤の超高齢者栄養介入における応用」と題して発表し、ペプチド摂取により体重減少が抑えられるなどの可能性を示した。
健康産業新聞からの取材に応じた麻植氏は、QOLの改善などの意見も出ている一方、商品化のためには味を損ねないような工夫が重要になってくるとも指摘している。
―ペプチド研究のきっかけは?
アミノ酸がいいとか、ペプチドがいいとかいう入り方ではなく、目の前にいる高齢者にどうやって食べてもらえるか、というのが第一。食べないことには栄養もつかないわけですから、目の前にいる嚥下困難者の方にいかに食べてもらうか、そういうところがきっかけだった。
―そこでペプチドにどう行きついたのか?
食べていくと栄養状態は改善するが、どんなに食べても改善しないグループがある。そこで食べ方をどう変えれば、栄養吸収が改善されるか、と考えた時に、ペプチドに行きついた。
―IACFPに第一回から参加されて、ペプチドをめぐる環境に変化は?
日本の学界でペプチドが取り上げられることは少なかったが、第一回のIACFPが開かれて2年目ぐらいから、学会でペプチドの研究発表が出始めた。環境は大きく変わってきていると思う。
―先生の研究成果をもとに御社での商品化は進んでいるか?
いまのところまだ商品化までは行っていない。低栄養の高齢者の方々にいかに質の良いものを召し上がっていただくかを考えるときの一つの選択肢として、ペプチドを含めた開発を進めている。
開発段階でポイントになるのは、食べてもらうには、おいしくないといけないという点だ。ペプチドの機能性というところはかなり実証されているが、ヒトが食べ続けられるかどうかになった場合、様々なことを考える必要がある。
例えば、味噌汁に混合オリゴペプチドを3g添加する実験を行ったが、これが4gになると、味が損なわれて食べてもらえない。おいしさを保つためには3gという量がカギになるが、研究者から「3gでは足りない」と指摘されることもある。しかし4gでは食べてもらえない。
―今後の研究ではどういうことを?
腰痛が良くなったとか、髪の毛が少し黒くなったなど、QOLが改善されたという声も出てきている。そのあたりのQOL改善をうたっていけるような研究にも今後力を入れていきたいと考えている。